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【アニメ考察】『プリパラ』における音の機能

映像作品において裏方の職業である声優が昨今タレントやアイドルのように表舞台に立つ存在として広く認知されてきていることの要因として、映像作品の中の登場人物と現実世界を繋ぐ役割として声優が機能していることが挙げられる。このことについて大いに関心を抱いたため、声優ユニットであるi☆Risのメンバーが主要キャラクターを務める『プリパラ』を取り上げ、作中で用いられる音、つまり声優の歌が作品においてどのように機能しているかを考察する。

概要

『プリパラ』は「プリパラ」という誰もがアイドルになれるテーマパークの中で登場人物達が全てのアイドルの頂点である神アイドルを目指して切磋琢磨するというストーリーである。作中において音が効果的に用いられているのはアイドルがライブをするシーンである。ライブは登場人物を演じる声優が歌唱を担当している。内容はCG映像による登場人物のダンスと共に登場人物の個性を表現した歌を披露するというものである。ライブシーンは毎話必ず、最低でも一回は挿入される。 このライブシーンには⑴登場人物の個性を表現する機能⑵ゲームでの体験を豊かにする機能⑶作品世界と現実世界とを繋ぐ機能の3つの機能があると考えた。

⑴登場人物の個性を表現する機能

登場人物はそれぞれが固有の性格や生い立ちなどを持ち、それをライブで表現する。時にはチームを組み、チームのメンバーの個性を掛け合わせたライブを行う。 登場人物の個性が表現されているライブとしてファルル というアイドルを例に挙げる。ファルル のライブには2通りが存在し、ファルル の個性の変化によってライブが変化するという仕組みになっている。ファルル は主人公と出会う前までは「プリパラ」の中でしか生きられない存在であり、生命を持たない人形であった。しかし主人公と出会い友情を知ってからは、生命を手に入れ新しい自己を手に入れる。このファルル の変化はファルル の声優である赤崎千夏によるライブ時の歌い方の変化に顕著に表れている。おそらく生命を持たないファルル は無機質な声音で歌い、生命を得たファルル は生き生きとした声音で歌うというように歌い分けているのだろう。このように、ライブには登場人物の個性を表現する機能があると考える。

⑵ゲームでの体験を豊かにする機能

『プリパラ』はタカラトミーによるゲームでもあることから、販促効果についても指摘する。ゲーム版『プリパラ』は大型ショッピングセンターなどに設置されている筐体で遊ぶリズムゲームである。 遊び方の大まかな流れを説明する。まず洋服やアクセサリーなどが描かれたカードをカスタマイズして筐体にスキャンし、オリジナルの「マイキャラ」を作る。そして、アニメのライブシーンをそのまま再現したかのようなCG映像と楽曲に合わせて画面の中で踊るマイキャラを鑑賞しながらリズムゲームをする。以上がゲーム版『プリパラ』の大まかな遊び方の流れである。 楽曲は筐体にしかないものもあるが、大半はアニメで放送されたライブにおいて使用されたものである。ライブシーンで使用された歌をゲームで用いることで、ゲームをプレイすることを通して作品世界との一体感が生まれることが期待される。このような体験を売ることを目的とする機能があるのではないかと考える。

⑶作品世界と現実世界とを繋ぐ機能

また、『プリパラ』と同様、アイドルが歌って踊るライブシーンを取り入れている作品に『アイカツ!』がある。しかし『アイカツ!』は登場人物を演じる声優と歌唱を担当する歌手が異なるという点が『プリパラ』とは異なる。この点から、『アイカツ!』よりも『プリパラ』の方が登場人物と歌唱担当とが密接に結びついていると言うことができる。 『プリパラ』では登場人物を演じる声優が舞台に立ち、登場人物と同じ衣装を着て、登場人物になりきって演技をしながらライブを行う。それだけでなく、登場人物同士のかけ合いも再現して見せるなどのパフォーマンスも行われる。このように声優と登場人物がシンクロすることで作品世界と現実世界とを繋ぐ機能があると考える。

まとめ

『プリパラ』におけるライブシーンには主に3つの機能があると考察した。『プリパラ』では歌を通して登場人物に対する理解を深め、ゲームでの体験を通して作品世界に参入することができる。そして声優が登場人物とシンクロすることで作品世界と現実世界の繋がりを錯覚させることに繋がるのである。しかしそうしたプロセスにおいて声優の役割が些か重過ぎるのではないかという憂慮もある。声優はあくまで演者であり登場人物そのものではない。声優と登場人物のシンクロへのあまりに度が過ぎた期待は声優にとって重荷となりかねないということをファンは肝に銘じる必要があると考える。